原子力発電 原子炉の緊急停止:スクラムの仕組み
原子炉を緊急停止させることをスクラムと言います。原子炉は、核分裂反応を利用して莫大な熱を生み出し、その熱で水を沸騰させて蒸気を作り、蒸気の力でタービンを回し発電機を駆動することで電気を作り出します。この核分裂反応は、非常に精密な制御の下で行われています。しかし、想定外の事象や機器の故障など、様々な原因によってこの制御がうまくできなくなる可能性があります。もし制御が効かなくなると、原子炉内の温度や圧力が急上昇し、大事故につながる恐れがあります。このような事態を未然に防ぐ最終手段として、原子炉には緊急停止システムが備わっており、この緊急停止のことをスクラムと呼びます。スクラムという言葉の由来には諸説ありますが、初期の原子炉開発にまつわる興味深い話が残っています。原子炉を緊急停止させる際、制御棒を炉心に挿入する必要がありました。初期の原子炉では、この制御棒に紐が取り付けられており、その紐を引っ張ることで制御棒を挿入し、原子炉を停止させる仕組みだったのです。この様子が、帆船のマストに登っている船員が緊急時にロープを使って甲板に飛び降りる様子に似ていたことから、スクラムと呼ばれるようになったと言われています。スクラムとは、本来ラグビー用語で密集状態を指す言葉ですが、原子炉の緊急停止の様子と重なり、いつしか原子力分野でも使われるようになりました。現在の原子炉では、ボタン操作で緊急停止が行われます。紐を引っ張るような手動操作は行われていません。しかし、名称はそのままスクラムとして現在も使われています。スクラムは、原子炉の安全を守る上で最後の砦と言える重要なシステムです。原子炉で万が一異常事態が発生した場合でも、スクラムによって原子炉を安全かつ迅速に停止させることができるため、周辺環境への影響を最小限に抑えることができます。原子力発電所の安全性を確保する上で、スクラムはなくてはならない存在です。
