原子力発電 速中性子:エネルギーが生み出す未来
速中性子とは、高速中性子とも呼ばれ、高い運動エネルギーを持った中性子のことです。中性子は原子核を構成する粒子のひとつで、電気的に中性のため、原子核の強いクーロン力に反発されることなく容易に原子核に接近できます。中性子はエネルギーの大きさによって、熱中性子、熱外中性子、速中性子などに分類されます。速中性子は、これらのうち最もエネルギーが高い種類です。では、具体的にどれくらいのエネルギーから速中性子と呼ぶのでしょうか。実は、明確な定義はありません。熱中性子炉や高速炉の設計、遮蔽の計算、放射線管理など、それぞれの分野によって異なる基準が用いられています。一般的には、0.1メガ電子ボルト以上、あるいは0.5メガ電子ボルト以上のエネルギーを持つ中性子を速中性子と呼ぶことが多いです。これは、熱中性子のエネルギーがおよそ0.025電子ボルトであることと比較すると、いかに速中性子のエネルギーが高いかが分かります。この高いエネルギーこそが、速中性子を原子力分野で重要な存在にしています。速中性子は、ウラン238のような通常は核分裂を起こしにくい原子核でも分裂させることができます。これは、高速増殖炉の原理となる重要な反応です。高速増殖炉では、ウラン238が速中性子によって核分裂を起こすと同時に、ウラン238が中性子を吸収してプルトニウム239に変わります。プルトニウム239は核燃料として利用できるため、消費した以上の核燃料を作り出すことが可能になります。このように、速中性子は原子力発電の将来にとって重要な役割を担っています。また、核融合反応においても重要な役割を果たしており、将来のエネルギー源開発においても欠かせない存在です。
