原子力発電 倍加線量法:遺伝への影響評価
私たち人間を含めた地球上のすべての生き物は、宇宙や大地、空気など、周囲の環境から常にごくわずかな放射線を浴びて生活しています。これを自然放射線と言います。この自然放射線によって、私たちの体の設計図とも言える遺伝子には、ごく低い確率で自然に変化が起こります。これを自然突然変異と呼びます。自然突然変異は生物の進化に欠かせないものであり、また、がんなどの病気の原因の一つにもなると考えられています。この自然突然変異は、放射線の影響を受けて増加することが知られています。そこで、どの程度の量の放射線を浴びると自然突然変異の発生率が2倍になるのかを示したものが「倍加線量」です。例えば、自然状態で1万人に1人が特定の遺伝子に変異を起こすとします。この時、放射線を浴びた結果、変異を起こす人が1万人あたり2人になるだけの放射線量が、その生物における倍加線量となります。つまり、自然の状態で起こる遺伝子の変化と同じ程度の変化を、放射線によって人為的に引き起こすのに必要な線量と言うこともできます。倍加線量は、放射線が遺伝子にどのような影響を与えるかを評価する上で重要な指標となります。様々な生物で倍加線量が調べられており、これらのデータは放射線防護の基準作りなどに役立てられています。ただし、倍加線量は生物種によって大きく異なるため、単純な比較はできません。また、同じ生物種であっても、年齢や性別、生活環境などによって変化する可能性があるため、注意が必要です。さらに、倍加線量は遺伝子の変化のしやすさだけを評価するものであり、放射線による健康への影響すべてを網羅的に評価するものではないことを理解しておくことが大切です。
