遠心分離法:ウラン濃縮の仕組み

電力を知りたい
先生、「遠心分離法」って、洗濯機のようにぐるぐる回してウランを濃縮する方法ですよね?でも、どうして回るだけでウランの濃度が変わるんですか?

電力の専門家
いい質問だね。確かに洗濯機と同じようにぐるぐる回すけど、洗濯機のように水と服を分けるのとは少し違うんだ。ウランには、ウラン235とウラン238という少しだけ重さが違う種類がある。遠心分離機で高速回転させると、重いウラン238は外側に、軽いウラン235は内側に集まるんだ。

電力を知りたい
なるほど。でも、一回回しただけでは、そんなに大きな差はできないですよね?

電力の専門家
その通り。一回ではわずかな差しかできない。だから、何度も何度も繰り返すことで、ウラン235の濃度を高めていくんだ。これを「カスケード」というんだよ。
遠心分離法とは。
電気を作るための力と地球の環境に関係する言葉、「遠心分離法」について説明します。遠心分離法とは、一般的にはぐるぐる回る機械を使って、混ざり合ったものを分ける方法です。原子力の分野では、電気を作る機械の燃料となる濃縮ウランを作る方法の一つを指します。ウラン濃縮装置では、たくさんの遠心分離機を繋げて使い、天然ウランを材料として、ウラン235を必要な濃度だけ集めます。天然ウランは、低い温度で沸騰する六フッ化ウランに変えて濃縮するので、気体の遠心分離法とも呼ばれます。速く回る遠心分離機に六フッ化ウランを入れると、ウラン235とウラン238の重さの差によって、回る筒の外側では重いウラン238が集まり、中心側では軽いウラン235が集まります。一つの遠心分離機でできる濃度の差は小さいですが、この作業を何度も繰り返すことで、ウラン235の濃度を原子炉の燃料として使えるまで高くすることができます。昔、原子力開発の始めに作られたガス拡散法と比べると、電気を使う量が少なく、また、必要な量に合わせて施設の大きさを変えやすいので、今では、ウラン濃縮施設のほとんどで遠心分離法が使われています。
はじめに

物質を分離する方法には様々なものがありますが、大きさや重さの違いを利用した方法の一つに遠心分離があります。私たちの身近な例では、洗濯機で濡れた衣類の水分を取り除く脱水機能が挙げられます。高速で回転する洗濯槽によって、衣類に含まれる水滴は外側へと押し出され、小さな穴から排出されます。これは、水よりも衣類の繊維の方が重いため、遠心力によって動き方に違いが生じるからです。
同じ原理は、原子力発電に必要なウランの濃縮にも応用されています。ウランには、核分裂を起こしやすいウラン235と、起こしにくいウラン238という二種類の仲間(同位体)が存在します。自然界に存在するウラン鉱石には、ウラン235がわずか0.7%しか含まれていません。原子力発電を行うためには、このウラン235の割合を数パーセント程度まで高める必要があります。この作業がウラン濃縮です。
ウラン濃縮に使われる遠心分離機は、高速で回転する円筒形の容器です。この容器に、ウランを気体の状態にした六フッ化ウランを注入します。すると、わずかに軽いウラン235を含む六フッ化ウラン分子は中心付近に集まり、重いウラン238を含む六フッ化ウラン分子は外側へと移動します。この差はごくわずかですが、遠心分離機を何段も直列につなぎ、何度も繰り返すことで、ウラン235の割合を高めていくことができます。
遠心分離法によるウラン濃縮は、他の濃縮法に比べて電力消費量が少なく、環境への負荷が少ないという利点があります。そのため、現在、世界中で建設されているウラン濃縮工場の多くで、この遠心分離法が採用されています。一見単純な原理ですが、実は最先端技術の一つと言えるでしょう。
| 対象 | 目的 | 仕組み |
|---|---|---|
| 洗濯機の脱水 | 衣類の水分を取り除く | 高速回転で水滴を押し出し、衣類より重い繊維との遠心力の差を利用 |
| ウラン濃縮 | ウラン235の割合を高める | 気体化したウランを高速回転させ、ウラン235と238のわずかな重さの差を利用。多段式で繰り返し濃縮 |
ウラン濃縮とは

原子力発電所で電気を起こすには、ウランという物質が必要です。ウランは、例えるなら薪のような役割を果たします。しかし、全てのウランが発電に使えるわけではありません。ウランには大きく分けて二つの種類があり、ウラン235とウラン238と呼ばれています。このうち、発電に利用できるのはウラン235の方です。ウラン238は発電には使えません。
天然に存在するウランには、ウラン235がほんのわずか0.7%程度しか含まれていません。残りのほとんどはウラン238です。このウラン235の割合が低いと、効率的に発電することができません。そこで、ウラン235の割合を人工的に高める必要があります。この作業がウラン濃縮と呼ばれるものです。
ウラン濃縮では、遠心分離機という装置がよく使われます。これは、洗濯機のように高速で回転する装置です。ウラン235とウラン238は重さがわずかに違います。この重さの差を利用して、遠心分離機の中でウランを分離します。高速回転によって、重いウラン238は外側に、軽いウラン235は内側に集まります。こうして、ウラン235の割合を高めていきます。
原子力発電所では、ウラン235の割合を3~5%程度に高めた濃縮ウランが燃料として使われています。濃縮したウランは、燃料集合体と呼ばれる形に加工され、原子炉の中に装荷されます。原子炉の中でウラン235が核分裂反応を起こすことで、熱エネルギーが発生し、その熱で水蒸気を発生させ、タービンを回して発電を行います。ウラン濃縮は、原子力発電を行う上で非常に重要な工程の一つです。
| ウランの種類 | 割合(天然ウラン) | 発電への利用 | 濃縮 |
|---|---|---|---|
| ウラン235 | 0.7% | 可能 | 濃縮が必要 (3~5%まで) |
| ウラン238 | 約99.3% | 不可能 | – |
| 工程 | 説明 | 重要性 |
|---|---|---|
| ウラン濃縮 | ウラン235の割合を人工的に高める作業。遠心分離機を使用。 | 非常に重要 |
遠心分離法の原理

遠心分離法は、洗濯機のように回転する力を用いて物質を分離する方法ですが、ウラン濃縮においても重要な役割を果たします。ウランには、ウラン235とウラン238という二種類の仲間が存在しますが、この二つの質量のわずかな違いを利用するのが遠心分離法です。ウラン235は原子力発電の燃料として利用される重要な物質ですが、天然ウランの中にはほんの少ししか含まれていません。そこで、ウラン235の割合を高める、つまり濃縮する必要があるのです。
まず、固体のウランを気体の六フッ化ウランという形に変えます。六フッ化ウランは常温では固体ですが、加熱することで気体になります。この気体となった六フッ化ウランを高速で回転する円筒形の遠心分離機に送り込みます。遠心分離機は、毎分数千回転という猛烈な速さで回転します。すると、回転によって生じる遠心力によって、重いウラン238を含む六フッ化ウランは円筒の外側に、軽いウラン235を含む六フッ化ウランは円筒の内側に移動します。この現象は、洗濯機で脱水するときに、水が外側に押し出され、洗濯物が中心部に集まる様子と似ています。
一度の分離作業で得られるウラン235の濃縮度はわずかなものですが、この分離作業を何度も繰り返すことで、ウラン235の割合を高めていくことができます。遠心分離機を何段も直列につなぎ、まるでカスケードのように配置することで、最終的に原子力発電に必要な濃度のウラン235を得ることができるのです。この方法は、他の濃縮方法に比べてエネルギー消費量が少なく、環境への負荷も小さいという利点があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 方法 | 遠心分離法(回転力を用いた分離) |
| 対象 | ウラン235とウラン238(質量の差を利用) |
| 手順 | 1. ウランを六フッ化ウラン(気体)に変換 2. 高速回転する遠心分離機に投入 3. ウラン238(重い)は外側、ウラン235(軽い)は内側に分離 4. 分離作業を繰り返し、ウラン235の濃度を高める |
| 回転速度 | 毎分数千回転 |
| 特徴 | 他の濃縮方法に比べエネルギー消費量が少ない、環境負荷が小さい |
遠心分離機の仕組み

遠心分離機は、物質を分離するために高速回転を利用する装置です。洗濯機で脱水するときに、水が外側に押し出されて服が乾くのも遠心力の働きによるものですが、遠心分離機はこの力をより強力に、そして精密に制御することで、目に見えないほど小さな物質の違いさえも選り分けることができます。
遠心分離機の中心には、回転軸を備えた円筒形の容器が設置されています。この容器の中には、さらに複数の円筒が入れ子状に配置されており、これらが高速で回転します。ウラン濃縮に使われる遠心分離機の場合、六フッ化ウランと呼ばれる気体のウラン化合物がこの容器に送り込まれます。六フッ化ウランの中には、ウラン235とウラン238という、ほんのわずかな重さの差しかない二種類のウラン原子が含まれています。
この容器が高速で回転すると、遠心力が発生します。この力は、回転中心から外側に向かって働く力であり、重い物質ほど強く影響を受けます。そのため、わずかに重いウラン238は外側の円筒壁に向かって移動し、軽いウラン235は中心付近に集まります。このようにして、ウラン235とウラン238を分離することができるのです。
一つの遠心分離機で得られるウラン235の濃度はごくわずかです。しかし、このわずかな濃縮効果を高めるために、何千台もの遠心分離機を連結し、段階的にウラン235の濃度を高めていきます。最初の遠心分離機でわずかに濃縮されたウランは、次の遠心分離機に送られ、さらに濃縮されます。これを繰り返すことで、原子力発電に必要な濃度のウラン235を得ることができるのです。この多段式に連結された遠心分離機のシステム全体をカスケードと呼びます。まるで滝が何段にも流れ落ちるように、ウランが次々と濃縮されていく様子から、この名が付けられました。
他の濃縮法との比較

ウランを濃縮する方法は、遠心分離法以外にもいくつか存在します。その代表的なものの一つがガス拡散法です。この方法は、六フッ化ウランと呼ばれる気体状のウランを、小さな穴がたくさん開いた膜に何度も通し、質量のわずかな差を利用してウラン235とウラン238を分離する技術です。ウラン235はウラン238よりもわずかに軽いため、膜を透過する速度が速く、この速度の違いを利用して濃縮を行います。
ガス拡散法は、第二次世界大戦中に原子爆弾開発のために最初に実用化されたウラン濃縮法であり、長年にわたって世界中で利用されてきました。しかし、この方法には大きな欠点があります。それは、莫大な電力が必要になることです。ウラン235とウラン238の質量差は非常に小さく、効率的に分離するためには、巨大な施設と膨大なエネルギーを消費する必要があるのです。
一方、遠心分離法は、高速回転する円筒の中に六フッ化ウランを入れ、遠心力を利用してウラン235とウラン238を分離する方法です。この方法は、ガス拡散法に比べて電力消費量が格段に少なく、より効率的にウランを濃縮することができます。そのため、現在建設されている新しいウラン濃縮工場では、ほぼすべてが遠心分離法を採用しています。
遠心分離法は、省エネルギーであることから、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量削減にも貢献します。また、必要な施設の規模もガス拡散法に比べて小さいため、環境への負荷も少ないと考えられています。こうして見ると、ウラン濃縮技術においては、遠心分離法がより環境に優しく、持続可能な方法と言えるでしょう。
| 項目 | ガス拡散法 | 遠心分離法 |
|---|---|---|
| 原理 | 気体状のウラン(六フッ化ウラン)を小さな穴がたくさん開いた膜に何度も通し、質量の差を利用してウラン235とウラン238を分離 | 高速回転する円筒の中に六フッ化ウランを入れ、遠心力を利用してウラン235とウラン238を分離 |
| 電力消費量 | 莫大 | ガス拡散法に比べて格段に少ない |
| 効率 | 低い | 高い |
| 施設規模 | 巨大 | ガス拡散法に比べて小さい |
| 環境負荷 | 大きい(CO2排出量が多い) | 小さい(CO2排出量が少ない) |
| 現状 | 過去に利用されていたが、現在は新しい工場ではほぼ採用されていない | 現在建設されている新しいウラン濃縮工場では、ほぼすべてが採用 |
まとめ

原子力発電所で利用される燃料には、ウランと呼ばれる物質が必要です。天然ウランには、核分裂を起こしやすいウラン235と、起こしにくいウラン238の二種類が存在します。発電のためには、ウラン235の割合を高めた濃縮ウランを製造する必要があります。このウラン濃縮に用いられるのが、遠心分離法という技術です。遠心分離法は、高速で回転する円筒形の装置を用いてウラン235とウラン238を分離します。この装置の中では、わずかな質量の差を利用して、重いウラン238を外側に、軽いウラン235を内側に集めることで濃縮を行います。
遠心分離法には、他の濃縮法と比べて多くの利点があります。特に大きな利点は、消費電力が少ないことです。他の方法、例えばガス拡散法では、ウランの化合物を気体の状態で拡散させて分離するため、大量の電力が必要となります。一方、遠心分離法は、一度装置を回転させれば、比較的少ない電力で運転を続けることができます。これは、地球環境への負荷を低減することにつながります。また、遠心分離法は、他の濃縮法に比べてウラン濃縮の効率も高いという利点も持ちます。効率が高いということは、より少ない資源で、より多くの濃縮ウランを製造できることを意味します。
このように、遠心分離法は、省エネルギーで効率的なウラン濃縮技術であり、現在世界のウラン濃縮工場で主流となっている方法です。原子力発電を支える重要な技術の一つと言えるでしょう。ウランは貴重な資源であり、その有効利用は将来のエネルギー供給において不可欠です。遠心分離技術の更なる進歩によって、原子力発電の安全性と効率性の向上、ひいては地球環境保全に大きく貢献していくことが期待されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 燃料 | ウラン235(核分裂しやすい) ウラン238(核分裂しにくい) |
| 濃縮方法 | 遠心分離法 |
| 遠心分離法の原理 | 高速回転する円筒内で、質量の差を利用し、ウラン238を外側、ウラン235を内側に分離 |
| 遠心分離法の利点 |
|
| 他の濃縮方法 | ガス拡散法など(大量の電力が必要) |
| 現状 | 世界のウラン濃縮工場で主流 |
| 将来の展望 | 更なる技術進歩で原子力発電の安全性と効率性向上、地球環境保全に貢献 |
