安全の考え方:固有の安全性とは

電力を知りたい
先生、「固有の安全性」って、一体どういう意味ですか?なんだか「受動的安全性」とごっちゃになりそうで…

電力の専門家
そうだね、確かに似ているけど、決定的に違う点があるんだ。受動的安全性は、何か問題が起きた時に、人の手を借りずに自然の法則などで安全な状態に戻る仕組みのことだよ。例えば、原子炉の冷却材が自然に循環する仕組みなんかがそうだね。

電力を知りたい
なるほど。じゃあ、固有の安全性は違うんですか?

電力の専門家
そう。固有の安全性は、そもそも問題が起こる可能性自体をなくしてしまう考え方だよ。例えば、火が出ないように、燃えない材料だけで建物を作るようなイメージだね。受動的安全性は問題が起きた後に対処するけど、固有の安全性は問題が起きないように事前に備える、という違いがあるんだよ。
固有の安全性とは。
電力と地球環境に関係する言葉である「本来の安全性」について説明します。「本来の安全性」は「受動的な安全性」と混同して使われることが多い言葉です。まず「受動的な安全性」とは、システムに何か危険が起きた時、外からの操作や信号といった入力がなくても、システム自身が持つ仕組みによって、危険を取り除いたり抑えたりすることを指します。この仕組みとは、システムを作っている物質の物理的、化学的な性質や、システム内で働く自然の法則(例えば、重力や自然対流など)によって実現される働きを指します。一方「本来の安全性」とは、そもそも危険が起きる可能性自体がなくなっている状態を指します。例えば、燃えない材料だけで作ったシステムは、火事に対して本来の安全性を備えていると考えられます。
はじめに

私たちの暮らしや経済活動を支える様々な仕組み、例えば電気を送る仕組みなどを安全に保つことは何よりも大切です。安全対策には、事故が起きた際の被害を小さくするだけでなく、そもそも事故が起きにくい仕組みを作ることも重要です。この事故が起きにくい仕組みを作る考え方を「固有の安全性」と呼び、近年注目を集めています。
この固有の安全性とは、一体どのようなものでしょうか。簡単に言うと、危険な状態そのものを取り除くことで安全性を確保する考え方です。例えば、高い場所に物を置かないことで、物が落ちて人に当たる危険を無くすといった具合です。
似た言葉に「受動的安全性」というものがあります。これは、事故が起きた時に自動的に安全装置が作動することで被害を最小限に抑えるという考え方です。エアバッグなどが良い例です。固有の安全性が危険そのものを無くすことを目指す一方、受動的安全性は危険が残っていても被害を小さくすることに重点を置いています。つまり、固有の安全性がより根本的な安全対策と言えるでしょう。
この固有の安全性の考え方は、電気を作る仕組みにも応用できます。例えば、太陽光発電や風力発電は、燃料を使わないため、燃料漏れや爆発といった危険性をそもそも持っていません。これは固有の安全性の良い例です。また、送電線についても、電気を送る電圧を下げることで感電や火災のリスクを減らせます。さらに、電気を蓄える仕組みである蓄電池も、安全性が高い種類を選ぶことで、事故のリスクを低減できます。
このように、固有の安全性の考え方を様々な場面で取り入れることで、私たちの暮らしを支える様々な仕組みをより安全で安心なものにしていくことができます。これからの社会において、固有の安全性はますます重要になっていくでしょう。
| 安全対策の考え方 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| 固有の安全性 | 危険な状態そのものを取り除くことで安全性を確保する。より根本的な安全対策。 | 高い場所に物を置かない、太陽光・風力発電(燃料不使用)、低電圧送電線、安全性が高い蓄電池 |
| 受動的安全性 | 事故が起きた時に自動的に安全装置が作動することで被害を最小限に抑える。 | エアバッグ |
受動的安全性との違い

時折、混同されがちな「固有の安全性」と「受動的安全性」。どちらも安全対策の上で大切な考え方ですが、その働きには大きな違いがあります。
「受動的安全性」とは、機器や装置に何らかの異常が起きた時に、人の操作や外部からの信号といった働きかけを必要とせず、装置自身が持つ仕組みにより危険な状態を抑え込む、あるいは取り除くことを意味します。例として、原子炉で冷却水が失われる事故を想像してみましょう。この時、人の手を借りずに重力によって自動的に冷却水が注入されるシステムがあれば、大事故につながる事態を防ぐことができます。これが受動的安全性の一例です。つまり、受動的安全性は、問題が起きてから、その問題を自然の法則などを利用して自動的に解決する仕組みと言えます。
一方、「固有の安全性」は、そもそも危険を生み出す原因そのものを取り除くことで、危険な状態が発生する可能性自体をなくすという、より抜本的な安全対策です。例えば、燃えやすい材料を使わずに機器を作ることで、火災の危険性を根本からなくしてしまうといった対策がこれに当たります。他にも、毒性のある物質を使わない、不安定な物質を使わない、といった対策も固有の安全性を高める例です。固有の安全性は、危険な状態を未然に防ぐ、いわば「予防」の考え方です。
このように、固有の安全性と受動的安全性は、どちらもシステムの安全性を向上させるための重要な考え方ですが、危険に対するアプローチの仕方が根本的に異なるのです。受動的安全性は、問題発生時の備えである一方、固有の安全性は問題発生の可能性を事前に排除する対策です。両者を正しく理解し、それぞれの特性を活かした安全対策を講じることが大切です。
| 項目 | 説明 | 例 | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 受動的安全性 | 機器や装置に異常が起きた時に、人の操作や外部からの信号といった働きかけを必要とせず、装置自身が持つ仕組みにより危険な状態を抑え込む、あるいは取り除く。 | 原子炉で冷却水が失われる事故時に、重力によって自動的に冷却水が注入されるシステム | 問題が起きてから、自然の法則などを利用して自動的に解決する(事後対策) |
| 固有の安全性 | そもそも危険を生み出す原因そのものを取り除くことで、危険な状態が発生する可能性自体をなくす。 | 燃えやすい材料を使わずに機器を作る、毒性のある物質を使わない | 危険な状態を未然に防ぐ(予防) |
固有の安全性の定義

本質安全とは、事故の発生を防ぐための備えや対応に頼るのではなく、システムそのものに潜む危険の芽を摘み取ったり、小さくすることで、事故が起こる可能性を根本からなくすという考え方です。これは、事故が起きた時の被害を少なくしようとするこれまでの安全対策とは大きく異なり、より積極的に安全を追求する姿勢と言えるでしょう。
これまで、安全対策といえば、事故が起きた時に被害を最小限に抑えるための設備投資や、作業員への安全教育などが中心でした。しかし、本質安全は、事故の発生そのものを未然に防ぐことに重点を置きます。そのためには、システムを設計する最初の段階から、危険となりうる要素を洗い出し、それを取り除くための対策を練ることが欠かせません。
例えば、化学工場を例に考えてみましょう。従来の安全対策では、危険な化学物質が漏れ出した場合に備えて、防護壁を設置したり、緊急時の対応手順を整備したりするといった対策が取られてきました。しかし、本質安全の考え方では、そもそも危険な化学物質を使わずに、安全な代替物質を使うことを検討します。もし、代替物質の使用が難しい場合は、化学反応を起こす温度や圧力を下げることで、危険性を低減させる工夫をします。
また、電力供給システムにおいても、本質安全の考え方は有効です。送電線に高電圧が流れていることで感電の危険性がある場合、電圧を下げることで感電のリスクを減らすことができます。あるいは、電線を地中に埋設することで、送電線に触れる機会そのものをなくすことも、本質安全の考え方の一つです。このように、様々な分野で、本質安全の考え方に基づいた対策を講じることで、より安全な社会を実現することが期待されます。本質安全は、単に事故を防ぐだけでなく、設備の簡素化やコスト削減にもつながるため、持続可能な社会の実現にも貢献する重要な考え方と言えるでしょう。
| 従来の安全対策 | 本質安全 |
|---|---|
| 事故発生時の被害軽減に重点 | 事故発生の未然防止に重点 |
| 設備投資、安全教育 | システム設計段階からの危険要素排除 |
| 化学工場:防護壁、緊急時対応手順 | 化学工場:危険物質の代替、反応条件変更 |
| 電力:高圧送電線 | 電力:低電圧化、電線地中化 |
| 事故防止のみ | 事故防止 + 設備簡素化、コスト削減 |
電力システムへの適用

電力供給網は、私たちの暮らしや経済活動を支える重要な社会基盤です。そのため、電力供給網の安定性と安全性を確保することは極めて重要です。電力供給網への様々な事象の影響を最小限に抑え、常に安定した電気を供給できるよう、様々な工夫が凝らされています。
送電線に落雷が直撃すると、大規模な停電を引き起こす可能性があります。このような事態を防ぐため、送電線には絶縁性に優れた材料が使用されています。また、送電線を地下に埋設することで、落雷の影響を避ける対策も取られています。地下に埋設することで、景観への影響も少なくなり、都市部の電力供給に適しています。しかし、地下埋設には建設費用が高額になるという課題もあります。
変電所は、電圧を変換して送電網に電力を供給する重要な施設です。変電所での火災事故は、広範囲にわたる停電につながる恐れがあります。そのため、変電所では不燃性の変圧器や遮断器が採用されています。火災の発生を防ぐだけでなく、万一火災が発生した場合でも延焼を防ぎ、被害を最小限に抑える対策が重要です。
近年、地球温暖化対策として、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入が拡大しています。これらの再生可能エネルギーは、電力供給網に分散して設置される分散型電源です。分散型電源の増加に伴い、それぞれの発電システムの特性に応じた安全対策を講じる必要性が高まっています。例えば、太陽光発電システムでは、落雷や過電圧に対する保護対策が重要です。風力発電システムでは、強風や落雷による破損を防ぐための対策が不可欠です。さらに、再生可能エネルギーは、天候に左右される不安定な電源であるため、電力供給網全体の安定性を維持するために、蓄電池の導入や電力系統の制御技術の高度化なども重要な課題となっています。
このように、電力供給網の安全を確保するためには、様々な角度からの対策が必要です。絶縁材料の改良や不燃性機器の採用といった設備面の対策だけでなく、再生可能エネルギーの導入に伴う新たな課題への対応など、技術開発や運用方法の改善も重要です。電力供給網の安定性と安全性を向上させるための努力は、私たちの暮らしと経済活動を支える基盤を強固にするために不可欠です。
| 対策対象 | 事象 | 対策 | メリット | デメリット/課題 |
|---|---|---|---|---|
| 送電線 | 落雷 | 絶縁性に優れた材料の使用 地下埋設 |
落雷の影響軽減 景観への影響が少ない 都市部電力供給に適している |
建設費用が高額 |
| 変電所 | 火災 | 不燃性の変圧器や遮断器の採用 | 火災発生防止 延焼防止 被害最小限化 |
– |
| 再生可能エネルギー (太陽光発電) |
落雷、過電圧 | 保護対策 | – | 天候への依存 電力系統の安定性維持 |
| 再生可能エネルギー (風力発電) |
強風、落雷 | 破損防止対策 | – | 天候への依存 電力系統の安定性維持 |
| 再生可能エネルギー全般 | 出力変動 | 蓄電池導入、電力系統制御技術高度化 | 電力系統の安定性維持 | – |
今後の展望

これからの社会を見通すと、人工知能やあらゆるものがインターネットにつながる技術の進歩によって、これまで以上に複雑で規模の大きな仕組みが作られていくと考えられます。このような複雑な仕組みを安全に動かすためには、従来の安全対策に加えて、仕組み自体が本質的に安全であるように考えて設計する「固有の安全性」という考え方がより重要になります。
この「固有の安全性」という考え方は、どんな仕組みにも当てはまる、安全性を高めるための基本的な指針となります。例えば、高いところから物を落とすと危ないため、そもそも高いところに物を置かないようにする、といった具合です。
今後、複雑な仕組みが増えていく中で、この考え方を基にした、より高度な技術開発が欠かせません。具体的には、仕組みの危険性を機械が自動的に判断する技術や、事故が起こる原因をあらかじめ取り除くための設計技術などが求められます。
例えば、自動運転の車を作る場合、車が人や障害物を検知して自動でブレーキをかける機能だけでなく、そもそも事故が起きにくい速度で走るように設計したり、危険な場所には近づかないようにルートを設定する機能などを備えることで、より安全性を高めることができます。
これらの技術開発は、安全で安心して暮らせる社会を作る上で非常に大切です。危険を予測してあらかじめ対策することで、事故やトラブルを未然に防ぎ、人々の生活を守ることができます。また、固有の安全性を高めることで、システムの複雑さによる新たな危険の発生を防ぎ、より信頼性の高い仕組みを作ることが可能になります。将来、様々な技術が発展していく中で、この「固有の安全性」という考え方が、より安全で豊かな社会を実現するための重要な鍵となるでしょう。
| 安全対策の考え方 | 具体的な技術 | 効果 |
|---|---|---|
| 固有の安全性 |
|
|
| 例:自動運転 |
|
より安全性を高める |
まとめ

この文章では、安全を確保するための考え方の一つである「固有の安全性」について詳しく説明しました。特に、事故が起きた時に被害を小さくするための「受動的安全性」とはどう違うのかを明確にしました。
「固有の安全性」は、そもそも事故が起こる原因そのものを取り除くという考え方です。事故の被害を小さくしようとする「受動的安全性」とは、事故に対する根本的な対処法が違います。例えば、火を使う作業でやけどを防ぐ方法を考えます。「受動的安全性」の考え方に基づけば、耐熱手袋を着用する、すぐに使える消火器を準備するといった対策が考えられます。一方、「固有の安全性」の考え方に基づけば、そもそも火を使わない方法を検討します。例えば、電気やガスなど他の熱源を使う、あるいは加熱せずに済む方法を探す、といった具合です。このように、「固有の安全性」は危険の芽を摘むことで、システム全体の安全性を大きく高めることができます。
電力システムのような社会基盤だけでなく、様々なシステムにおいて「固有の安全性」を考えた設計や運用は、今後ますます重要になるでしょう。電力システムを例に挙げると、現在の原子力発電所では、事故が起きた際に放射性物質の放出を抑えるために、非常用炉心冷却装置などの安全装置が備えられています。これは「受動的安全性」に基づいた対策です。しかし、炉心溶融そのものを起こりにくくするような設計が「固有の安全性」に基づいた対策と言えます。事故が起こってから対策を施すのではなく、そもそも事故が起こらないように設計することで、より高い安全性を確保できるのです。
今後、技術開発が進むことで、より安全で信頼できるシステムが実現することを期待します。事故が起きた際の被害を軽減するだけでなく、事故そのものを未然に防ぐという「固有の安全性」の考え方を積極的に取り入れることで、社会全体の安全性を高め、安心して暮らせる社会を実現できるでしょう。この文章を通して、「固有の安全性」の重要性について理解を深めていただければ幸いです。
| 安全対策の考え方 | 説明 | 例(火を使う作業でのやけど防止) | 例(原子力発電所) |
|---|---|---|---|
| 固有の安全性 | 事故の発生原因そのものを取り除く。 | 火を使わない方法を検討する(電気、ガスなど他の熱源の利用、加熱不要な方法の模索) | 炉心溶融そのものを起こりにくくする設計 |
| 受動的安全性 | 事故発生時の被害を最小限にする。 | 耐熱手袋の着用、消火器の準備 | 放射性物質の放出を抑える安全装置(非常用炉心冷却装置など) |
