原子力発電 二重温度交換法で重水を作る
水素には、兄弟のような存在である同位体と呼ばれる仲間たちがいます。水素の同位体には、重水素や三重水素などがあり、これらは原子核の中にある陽子の数は同じですが、中性子の数が異なっています。この中性子の数の違いは、一見わずかな差のように見えますが、それぞれの性質に微妙な違いを生み出します。この性質の違いを利用して、重水を製造する方法があります。その方法は、二重温度交換法と呼ばれています。重水とは、通常の水の中に含まれる水素が重水素に置き換わった水のことです。重水は、原子力発電所の原子炉で中性子を減速させる減速材などに使われる重要な物質です。通常の水と重水は、化学的な性質はほとんど同じです。どちらも水として同じように振る舞い、見た目も区別がつきません。しかし、重水素を含む重水は、通常の水よりもわずかに重くなります。これは、重水素が通常の水素よりも中性子1つ分だけ重いためです。また、沸騰する温度(沸点)や凍る温度(融点)も通常の水よりも少しだけ高くなります。たとえば、水の沸点は摂氏100度ですが、重水の沸点は摂氏101.4度と、1度強だけ高くなります。これらの違いは非常に小さいですが、特殊な技術を用いることで、通常の水と重水を分離することが可能になります。二重温度交換法は、まさにこのわずかな沸点の差を利用した分離方法で、水と硫化水素の間で何度も水素と重水素を交換させることで、重水を濃縮していきます。このように、目には見えないほどの小さな性質の違いを巧みに利用することで、私たちは必要な物質を手に入れることができるのです。
