原子力発電 再処理の鍵、TBP溶媒の役割
リン酸トリブチル(略称TBP)とは、無色透明の液体状の有機化合物です。見た目には水と区別がつきにくい透明な液体ですが、水とは異なり独特のにおいがあります。ウラン鉱石からウランを取り出す工程や、使用済み核燃料を再処理する工程で、溶媒抽出という方法に用いられる重要な物質です。化学式は(C₄H₉)₃PO₄で表され、融点は摂氏マイナス80度、沸点は摂氏289度、比重は25度で0.98という特性を持っています。つまり、常温では液体ですが、非常に低い温度で凍り、高い温度で沸騰します。また、水と油のように、水にはほとんど溶けません。しかし、ドデカンなどの有機溶媒には容易に溶けるという性質があります。この性質こそが、溶媒抽出を可能にする鍵となっています。溶媒抽出とは、水溶液中に含まれる特定の物質を、それと混じり合わない有機溶媒に移動させる操作です。TBPの場合、水溶液中のウランやプルトニウムといった特定の元素と結びつきやすく、それらをTBPを含む有機溶媒相へ選択的に取り込むことができます。まるで磁石が鉄を引き寄せるように、TBPはウランやプルトニウムを水溶液から有機溶媒へと移動させるのです。さらに、TBPは硝酸による化学変化を受けにくく、放射線による分解の影響も受けにくいという特性を持っています。これらの特性は、再処理を行う上で非常に重要です。強い放射線を帯びた使用済み核燃料を扱う再処理工程では、薬品や放射線に強い物質が不可欠だからです。このように、TBPは数々の優れた特性を兼ね備えているため、核燃料サイクルにおいて重要な役割を担っていると言えるでしょう。
