サーマルストラティフィケーション

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原子力発電

温度成層化:原子炉への影響

高速増殖炉は原子力発電の中でも、核分裂反応で発生する熱を使って電気を作る方式の一つです。この高速増殖炉には、炉心から出てくる冷却材の温度が500℃以上と、とても高温になるという特徴があります。炉心では核分裂反応が盛んに起こり、そこで発生した熱で冷却材のナトリウムが温められます。ナトリウムは炉心の出口で最も高い温度に達し、炉心の入口に戻るまでに冷やされます。このため、炉心の出入口では約150℃もの温度差が生じます。高温のナトリウムと低温のナトリウムが炉容器の中に同時に存在すると、ナトリウムの密度差によって浮力が発生します。高温のナトリウムは密度が小さいため上に、低温のナトリウムは密度が大きいため下に移動しようとします。同時に、ナトリウムは炉の中を循環しているので流れによる力も働きます。この浮力と流れの力の兼ね合いで、ナトリウムがうまく混ざり合わず、層状に分布する現象が起こります。これが温度成層化、またはサーマルストラティフィケーションと呼ばれる現象です。温度成層化が起こると、炉容器の中のナトリウムは高さ方向に温度の勾配、つまり温度変化を持つことになります。高温のナトリウムは上部に、低温のナトリウムは下部に溜まり、層状の構造を作ります。ちょうど、お風呂で熱いお湯が上に、冷たい水が下に溜まる様子と似ています。この温度成層化は、炉の構造材に熱応力を発生させるなど、炉の安全な運転に影響を与える可能性があるため、高速増殖炉の設計や運転においては、この現象を適切に評価し、対策を講じることが重要です。