原子力発電 安全な原子力利用のために:臨界安全管理
原子力発電所では、ウランやプルトニウムといった核燃料物質が利用されています。これらの物質は、原子核分裂と呼ばれる現象を起こす性質を持っています。原子核分裂とは、中性子と呼ばれる小さな粒子が核燃料物質にぶつかると、核燃料物質が分裂し、さらに複数の中性子と莫大なエネルギーが放出される現象です。この時、放出された中性子が再び他の核燃料物質に衝突すると、さらに原子核分裂が起き、また中性子が放出されます。このように、中性子が次々に原子核分裂を引き起こし、連鎖的に反応が続く状態を「臨界」と呼びます。臨界状態には、大きく分けて三つの種類があります。一つ目は、中性子の発生と吸収のバランスが取れ、反応が一定の割合で持続する「臨界」の状態です。二つ目は、発生する中性子の数が吸収される数を上回り、反応が加速していく「超臨界」の状態です。三つ目は、発生する中性子の数が吸収される数よりも少なく、反応が減速していく「未臨界」の状態です。原子力発電では、この臨界状態を精密に制御することで、安定したエネルギーの発生を維持しています。制御棒と呼ばれる装置を用いて、中性子の吸収量を調整することで、反応の速度を制御し、常に「臨界」状態を保つように設計されています。もし、この制御が失われ、「超臨界」状態に陥ると、反応が急速に加速し、制御できないほどの大量のエネルギーが短時間に放出され、大事故につながる危険性があります。そのため、原子力発電所では、多重な安全装置を備え、厳密な管理体制のもとで運転されています。
